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令和5年12月公開 納得和尚のなっとく電話 第46話

「時空を超えて」

【健太郎】 もしもし、和尚さん?健太郎です。浄土宗が開かれた時のことについて教えてほしいんだ。うん、うん。あれ?本当に和尚さん?納得和尚さんだよね?えっ!!ゲ、ン、ク、ウ さん??ごめんなさい!番号を間違えたみたいです。えっ!教えてくれるの。へー、そうなんだ。うん、うんうん、なるほど誰もが楽しく暮らせて幸せに………うん、よくわかりました。ありがとうございます。それじゃ、失礼します。

【祖 父】 健太郎。どうしたんじゃ?どこに電話をかけておったんじゃ?
【健太郎】 それがね。物知り寺の納得和尚さんに電話したつもりだったんだけど、番号を間違えたみたいで、違うおうちにかけちゃったみたいなんだ。
【祖 父】 それは困ったなぁ。でも間違い電話にしては長いこと話を聞いておったな。
【健太郎】 そうなんだ。でもね、そこもお寺だったみたいで、浄土宗が開かれた頃のことについて色々と教えてくれたよ。法然上人は、貧しかったり、病気が流行ったりして、みんなが苦しんでいる姿を見て、誰もが楽しく暮らせて幸せになれるような教えが仏教の中にないのかって、たくさんの和尚さんを訪ね歩いたり、たくさんのお経を読み返してみたりして探したんだって。そしてやっと見つけたのが、ゼンドウ?さまの「カンギョウなんとか」ていう本だったんだって。それでお念仏を称えればみんな幸せになれんだ!ってことに気づいたので、それをみんなに教えてあげようと今、吉水で皆にお話ししているところなんだって。
【祖 父】 おぉ、吉水ということは、京都の知恩院かの?健太郎は間違って知恩院に電話してしまったようじゃな。きっとそこで、たまたまお説教に来られておった和尚さんが電話に出てくれたんじゃろうな。なんと、不思議なご縁じゃったな。ありがたいことじゃ。他にその和尚さん、何か言っておらんかったか?
【健太郎】 木曽のお侍さんが京都に乗り込んできた時はびっくりして、お経を読むことができなかったって言っていたよ。
【祖 父】 お侍さんが京都に乗り込んできた?時代まつりのことかの?確かに京都の祭りの時は賑やかで、お経どころじゃないかもしれんのう。他に何か言っておらんかったか?
【健太郎】 これからクジョウさんに浄土宗の教えを論文みたいにして残してほしいと頼まれたんで「センチャクホンガンネンブツシュウ?」っていうお念仏の教えをまとめた本を書く準備をしてるんだって。でも文章に残してしまうと色々と中傷されたり批判されたりするかもしれないので、読んだら壁の中に埋めて隠してくださいってお願いしてるんだって。浄土宗の教えは、今までに日本には伝わっていないから、人々にとっては新しい仏教の形なので批判があるかもしれないけど、この教えで多くの人が救われるのなら、それでいいんだって言ってたよ。850年も続いてきたんだから正しい教えなんだよね。て言ったら、850年も続いているのか?て驚いていたよ。それから、兎に角、お念仏をお称えしなさい。阿弥陀様が必ず救ってくださいますよ。南無阿弥陀仏って。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏ってずっと言ってる不思議な和尚さんだったよ。
【祖 父】 ちょっと待て、健太郎。その和尚さんのお名前を聞いたのかい?何て言う方なんじゃ?
【健太郎】 えっとね。「ゲンクウ?」とか言ってたよ。
【祖 父】 ゲ、ゲンクウ?もしかして「法然坊源空」の源空かい?850年前に浄土宗をお開き下さった法然上人と電話で話をしたのか?
【健太郎】 おじいちゃん。そんなはずないじゃない。850年も前の人とお話なんてできるわけないじゃん。
【祖 父】 しかしよく考えてみ。物知り寺に電話したのに、納得和尚が出ずに源空さんという方が出たんじゃろ。それから、善導大師の『観経之疏』のお話や今、吉水でお話をしてるとか。木曽のお侍が京都に乗り込んできたってのは「木曽の冠者」、ようは源氏と平家が戦っておった頃に木曽義仲が都攻めをした時の話じゃろ。それに、カネザネさん、九条兼実公に頼まれて『選択本願念佛集』を書くことになっているとか法然上人本人が言ってるとしか思えんのじゃが。
【健太郎】 え〜!じゃ、僕は本当に法然上人とお話したっていう事?電話が時空を超えて、法然上人の元へ行ったんだ。せっかくだから、もっとお話ししたかったなぁ。優しく皆を包み込むような声で、声を聴いているだけで幸せな気分になれたよ。
【祖 父】 それは、うらやましいのう。ワシも法然上人のお声を聴いてみたかったわい。この世ではお会いすることはできないが、お念仏をしっかり称えて、極楽浄土で必ず法然上人にお会いするぞ。では早速
【二 人】 ナムアミダブ、ナムアミダブ…


●キャラクター紹介
【健太郎】 小学校高学年の好奇心旺盛な男の子
【祖 父】 健太郎のおじいちゃんで、数年前に奥さんを浄土へ見送った
【和 尚】 物知り寺の住職でお坊さん名は「納得」  甘いものが大好物(今回はお休み)


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