令和元年１０月公開　ぼいす宅配便

「悩み多きチャーリー・ブラウン」

　紀州路発ぼいす宅配便
　この番組は、浄土宗和歌山教区がお届けしています。

　１０月になり、秋も深まりゆく今日この頃です。良い気候に誘われて、あれやこれやとお出かけの計画を立てている方もいらっしゃることでしょう。
　べつに遠出をしなくても、家の外に出て心地よい朝の空気を目一杯吸い込んで空を見上げれば、季節を十分に感じることができます。
　「砂のごとき　雲流れ行く　朝の秋」
　正岡子規が見上げたのは、うろこ雲でしょうか、さてまたいわし雲でしょうか。いずれにせよ、一句詠みたくなる見事な秋空だったのでしょう。

　和歌山教区の教化ラジオ　紀州路発ぼいす宅配便へ　ようこそおいでいただきました。　今はキャラクタービジネスが全盛といえる時代です。漫画やアニメーションだけでなく、イベントのイメージキャラクターや、全国ご当地キャラクターなど、名前を覚えきれないほど大量のものが、メディアや店頭を賑わしています。
　そんな数えきれないほどのキャラクターの中で、長い間にわたり高い人気を保っているのが「スヌーピー」です。特に女性に限れば、その人気は盤石といえるものです。耳と鼻が黒いこのビーグル犬の描かれたバッグやコーヒーカップ、「スヌーピー」そのものの縫いぐるみやキーホルダー、きっと皆さんの周りでも見かけたことがあるでしょう。
　「スヌーピー」は、アメリカ・ミネソタ州生まれのチャールズ・Ｍ・シュルツによるコミック『ピーナッツ』に登場するキャラクターです。１９５０年１０月２日から２０００年２月１３日の５０年間、新聞に連載されていました。作者シュルツは、７５歳の時一度だけ取った誕生日休暇を除き、休むことなく、たった一人で描き続けました。
　「スヌーピー」の人気と知名度から誤解されていますが、この『ピーナッツ』の主役は、不器用だけれど心優しい少年「チャーリー・ブラウン」です。でも飼い犬の「スヌーピー」には、「ごはんをくれる丸頭の男の子」としか認識されていません。
　この少年とビーグル犬を取り巻く個性的な仲間たちが、読者を楽しませてくれます。「チャーリー・ブラウン」の友達で、ベートーベンを愛し、いつもおもちゃのピアノを弾いている「シュローダー」。大きな声でいつもガミガミ言っている「ルーシー」。その弟の「ライナス」は頭が良く、赤毛の女の子に恋する「チャーリー・ブラウン」の相談相手でもあります。「スヌーピー」の大親友、黄色い鳥の「ウッドストック」は、真っ赤な犬小屋の屋根の上でいつも一緒に昼寝をしています。他にもたくさんの愉快な友人達や、「スヌーピー」の親兄弟も登場します。
　お話は、子供たちの何気ない日常のことですが、いくつかお決まりの設定があります。「チャーリー・ブラウン」がピッチャー兼監督を務める、いつも負けてばかりの野球チームの話や、テニス、フットボールなどのお話がよく登場するのは、作者のスポーツ好きを反映しているようです。また、子供たちが、煉瓦塀越しに人生を語り合うシーンもおなじみです。
そのウイットに富んだ会話の数々は、子供たちの言葉でありながら、大人の心も刺激します。『ピーナッツ』の日本語版は、詩人の「谷川俊太郎」さんが翻訳を手掛けています。セリフを感性豊かに表現したその日本語も、この作品の大きな魅力です。
　主人公「チャーリー・ブラウン」は、眠れない夜を過ごすほど悩みが多く、いつも人生について、恋について、友達について考えています。「スヌーピー」に悩みを打ち明けてみても、知らんぷりです。いつも悲観的になってしまう「チャーリー・ブラウン」に、自分自身を重ねてしまう人もいるのではないでしょうか。
　登場人物の中でいちばんの哲学者、「ライナス」はこう語っています。
「永遠に続くものは何も無い。全ての良いことには終わりが来なければならないんだ。」
時折、聖書の文言を引用することがある「ライナス」ですが、図らずも、仏教の根本思想である「諸行無常」を説いていたのですね。
良いことが永遠に続くと思って暮らしていると、その希望は必ず打ち砕かれて、苦しみが生まれます。物事に常なるものはない、変わり続けるのだと心得て、生活していくことが大切です。苦しみから逃れ、より良い人生を送るための考え方には、このように国や宗教を超えた共通する真理というものがあるのでしょう。

　では、今月はこのあたりで。また来月におあいしましょう。
紀州路発ぼいす宅配便でした。